ポスト抗体の道具立て(イントロ)
抗体薬がもてはやされて久しい。その効果、内因性物質であることに起因する生体内での安定性と安全性(あくまで物質としてのであり、選ぶ標的によってはこの限りではない)は、これまでの低分子薬にはないものであった。その上、標的を異にしても「抗体」であることには変わりないことから、創薬から生産まで同じプラットフォームで作成可能である点も工業的には評価される点であろう。またコストに関しても、最初期の抗体こそその生産コストは莫大であったが、様々な工夫によりかなりの低価格で生産可能になってきている。これらのadvantageを有する抗体薬が、世界の医薬品売り上げの大きな一翼を担っても、全くおかしなことではない。事実、最初はご多分にもれずバイオベンチャーによってはじめられた抗体創薬は、もはやメガファーマにもなくてはならないものとなっている。
とはいえ、その抗体にも問題点はないわけではない。150kDa以上の分子量があることから基本的に生産は動物細胞で行われる。構造にジスルフィド結合を含み、熱安定性はそれほど高くはない。これらの問題点を解決する、いわばポスト抗体の道具立てについて、数回に分けて紹介したい。ここでいうポスト抗体とは、タンパクを利用した技術で、抗体そのものを操作したもの、つまり、低分子抗体(一本鎖抗体やFab)、糖鎖改変による活性増強などは含まないこととしたい。